二番煎じ

 本来この噺は「さあ、これから寒くなるな」と感じ始めた初冬の頃に紹介すべきものである。
 これを書いている3月末時点では、もう手遅れなのである。しかし、松本地方は首都圏に比べ3週間程度は春の訪れが遅いため、まだまだ鍋がおいしいのではと推察し、取り急ぎ掲載する。

 さて、この噺では、町内の旦那衆が集まって寒い冬の最中火の番の夜回りをすることになるのだが、結局番小屋に酒やら猪肉やらを持ち寄って浮かれ騒ぎをし ている模様が描かれている。それに気づいた役人との丁々発止のやりとりが面白い。

 時代劇からの影響かもしれないが、大店の旦那といえば、とかく権力を振りかざして、やいのやいのと店の経営に口を出している姿が思い浮かぶ。しかし、実 際には店の切り盛りは番頭に任せて、悠々自適の暮らしを送っていることの方が多かったようだ。
 店の者達は仕事が大変だからと、自分が夜回りの役を買って出るという、ある意味いい噺でもある。

 二番煎じについては、古今亭志ん朝もCDを出しているが、筆者としては三遊亭円楽の方をお薦めする。
 猪肉を食う場面が何ともうまそうなのだ。また、志ん朝の侍が比較的堅いのに比べ、今にもよだれが出てきそうな侍が、いい味を出している。これを聴いてい ると、猪鍋を肴に熱燗で一杯やりたくなること請け合いである。