ナポレオン

深志落研を語るときに、無くてはならないのが「ナポレオン」です。

 知らない方のために申し上げておきますと、カードゲームの1種で、5名がナポレオン軍2名(ナポレオン+副官)対連合軍3名に分かれて対戦します。

 ルールは追ってご説明いたしますが、筆者がいた頃(昭和50年代後半)の深志では、どこのサークルでも、部室に集まっては年がら年中ナポレオンばかり行っていました。
 中でも「博物会」と「落研」がナポレオンの双璧と言われており(本当はあと1サークルあった気もしますが)、上級者でないと参加できない雰囲気がありました。

 カードゲームにはよくあることですが、ナポレオンにも地方地方によるローカルルールというものがありまして、深志のナポレオンは割合複雑なルールだったように思います。

 さて、ここから先、まずは「深志ナポレオン」(当時)の紹介と、落研ナポレオンに纏わる話題などをご紹介していきたいと思います。




【ゲームの基本】

 10、J、Q、K、Aの5種類のカード(したがって、全部で20枚→ここでは、便宜的に「絵札」と呼びます)のうち、ナポレオン軍が、宣言した枚数以上を取ったらナポレオン軍の勝利、取れなかったら連合軍の勝利になります。

 すなわち、ナポレオン軍が「13枚取る」と宣言した場合は、連合軍が8枚以上取った時点でナポレオン軍の負けが決まります。

 では、「どうしたら、カードを取ることが出来るのか」については、ゆっくりとご説明します。




【ゲームの進め方】

1.ジョーカーを加えた全部で53枚のカードから、10枚ずつを5人に配ります。余った3枚は、場に伏せておきます。

2.各自は自分の手を見て、「ナポレオンになっても勝てるな」《注1》と思ったら、ナポレオンになる旨を宣言します。これを「立つ」と言います。この時、「切り札」を何にするか(クラブ、ダイヤ、ハート、スペード)も合わせて宣言します。

3.もし、「立つ」と宣言をした人が1名だったら、この時点でナポレオンは決定します。しかし、2名以上存在した場合、ナポレオン宣言をした者同士で、自分たちが取る絵札の枚数を吊り上げていきます。

4.「取る枚数」は、13枚からスタートします。また、数字を上げる順番は、より弱いマーク(上記に示した順、すなわちクラブが一ばん弱い)を切り札にすると宣言をした人からになります。

5.数字を吊り上げてゆくにしたがい、宣言をしたメンバーは徐々に脱落してゆくわけですが、最後に残った者がナポレオンになります。たとえば、その時点で16枚まで吊り上がっていたら、ナポレオン軍は16枚以上取ることを余儀なくされます。

6.ナポレオンに決まった人は、自分をサポートしてくれる「副官」を指名します。副官は通常、ナポレオンが持っていない札の中で、最高の札を持っている人を指名します。ただし、副官は自分が副官である旨を明らかにしてはいけません。何食わぬ顔で、連合軍として振る舞い、ナポレオンを陰からサポ
ートするのです。(もちろん、副官として指名された札を出した時点で、副官の正体は明らかになります)

7.副官を指名してから、場に伏せてあった3枚の札をナポレオンは自分の札として持ちます。もしこの時、伏せてある札の中に副官に指名した札があったら、ナポレオンは1人で残りの4人を相手にして戦うことになります。これを「一人立ち」《注2》と言います。ナポレオンは、場の3枚も含め、13枚となったカードの中から不要なもの3枚を場に捨てます。この時、絵札を捨ててはいけません。

8.これで準備が完了です。いよいよゲームがスタートします。

9.まずは、ナポレオンから札を1枚出します。右回りに、順番にカードを出していきます。この時、最初の人が出したカードと同じマークのカードを出さねばなりません。ただし、同じマークのカードがない場合には、何を出しても構いません。こうして、5人が1枚ずつカードを出し終わった時点で、一ばん強いカード《注3》を出した人が、場に出ている絵札をすべて取ってゆくことが出来るのです。

10.一ばん強い札を出した人が、次回の最初の札を出す権利を得ます。

11.10枚のカードをすべて出し終わった時点《注4》で、ナポレオン軍、連合軍の取得した絵札の枚数を確認し、勝利チームを決めます。

《注1》《注3》 カードの強さの項で説明します。

《注2》 一人立ちになる確率は、3/43≒1/14ですので、滅多に起きることはありません。

《注4》 実際には、すべてのカードを出し終わる前に勝敗が決する場合がほとんどです。




【カードの強さ】

 原則として、一ばん最初に出した人と同じマークのカード(最初の人がダイヤで回ったらダイヤ)の中で、最も大きいカード(Aが一ばん大きく、2が一ばん小さい)を出した人が勝ちになります。

 したがって、最初の人がダイヤで回ったにも関わらず、ダイヤがないためクラブのAを出しても勝つことは出来ません。しかし、仮にクラブが「切り札」だった場合には、切り札を出した人が勝ちになります。

 また、以下のように特別な強さを持つ札がありますので、強い順に紹介します。

1.スペードのエース → 「オールマイティー(略して「マイティー」)」と呼ばれ、すべてのカードの中で最も強いカードです。ただし、例外があり、ハートのクイーン(通称「よろめき(さらに略して「よろ」)」にだけは負けます。

2.正ジャック(略して「正」) → 切り札のJ。

3.裏ジャック(略して「裏」) → 切り札と同じ色のマークのJ。(つまり、切り札がダイヤならば、ハートのJ)

・・・と、ここまで紹介した時点で、ややこしいルールを説明します。分かり易く説明できるかどうか自信はありませんが、精一杯努力してみます。

<その1>

 全員が同じマークを出した場合、その中に「2」があれば「セイムツー」と言って、2を出した人の勝ちになります。ただし、マイティーと正には負けます。しかし、裏には勝ちます。(これが、深志ルールの特徴の一つ)

<その2>

 最初にジョーカーを出した場合、これは「切り札請求(略して「切り請」)と言いまして、切り札を持っている人は、場に出さなくてはなりません。そして、ジョーカーを出した人が勝ちになりますが、マイティーにだけは負けます。また、ジョーカーは最初に出さなくては意味が無く、後で出した場合には最も弱い札になります。なお、後で出した場合は、ジョーカーもセイムツーが効く対象になります。

<その3>

 最初に、スペードの3を出した場合、これは「ジョーカー請求(略して「ジョー請」)」と言いまして、ジョーカーを持っている人は出さなくてはなりません。

<その4>

 一ばんはじめの回りでは、切り札とスペードを出すことはできません。また、セイムツーも効きません。したがって、ナポレオンは、最初の回りに限り、ハート、ダイヤ、クラブのいずれかの「A」を持っていれば、確実に絵札を取ることができます。もちろん、ナポレオンが「A」を持っていない場合、その他のメンバーが、ナポレオンが出したカードと同じマークの「A」を出せば確実に絵札を取ることができます。


 さて、前述の《注1》で示した、「どのような手ならばナポレオンとして立てるか」についてですが、目安としては、マイティー、正、裏のうちどれかが1枚以上あり、切り札が5枚以上あれば何とかなるでしょう。自分の持っていない札は副官に指名すればよいわけですから。

 個人的な目安としては、切り札5枚ならば15枚はクリア、6枚で16枚はクリア、7枚で17枚はクリアというところでしょうか。これは、場に伏せた3枚の中にも切り札が1枚くらいは含まれているな、という期待を込めての数字です。

 「落研のレベルが高い」と言われるのは、まずは、13、14枚くらいでは簡単にはナポレオンとして立たせてくれない、というところにあります。15、16枚が普通で、18枚を越えることもざらにあります。たとえ、自分がナポレオンになれるような良い手でなくとも、ひたすら相手の枚数を吊り上げるために「立つ!!」という宣言をし、その結果として悲惨な目にあったり、あるいは場に伏せてある3枚に助けられたり、副官に助けられたり、というドラマが起き
るのも、ナポレオンの楽しみの一つです。ただし、「運」にばかり頼っていると、皆の顰蹙を買うので注意する必要があります。




 さて、以上を踏まえた上で、落研ナポレオンの特殊ルール紹介に突入していきたいと思います。