哀愁の浪人部屋

※S56年卒のS.M.氏からの投稿を元に作成。


 深志落研の落語口演の会場となるのは、図書館の2階である。ただし、今はどうなっているのかは不明である。(その辺、地元に残っているOB達よ、報告してね)
 この図書館の2階、通称「浪人部屋」と呼ばれており、一生懸命頑張ったハズ(本当に頑張ったんですよねぇ!)なのに残念ながら大学受験に失敗した浪人生の中で、予備校には行かず「宅浪」を決め込んでいる連中が、ここでめいめい自習して翌年の受験を目指していた。

 彼らは浪人のくせに、時折「体育の授業」と称してソフトボールなどもやっていた。ご丁寧にチーム名まであって「浪人ベヤーズ」というのだ。もちろん、「がんばれ、ベアーズ」をもじっている。そして、現役生たちと交流試合なども行っていた。

 そんな浪人部屋の住人達も、私たちが落語口演を行うときには、図書館の2階を明け渡さねばならない。仕方なく自宅に籠もって勉強を続ける人もあれば、仕方なく落語口演を見に来てくださる奇特な人もいた。

 さて、我が落研からも、目出度く浪人ベヤーズのメンバーとなった人がいた。筆者の1年先輩の部長Y.Oさんである。Y.Oさんは、現役時代も無類のナポ レオン好きだったが(だから浪人したという噂もあるが)、浪人してからは時間が自由になるだけにもっと始末が悪かった。部室に現れては我々後輩に授業をさぼらせ、ナポレオンに興じているのである。

 しかし、そんなY.Oさんであったが、一浪のみで無事に大学に合格することができた。筆者は、浪人した。浪人部屋には意地でも入らなかった。


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