石狩ラーメン

 八十二銀行松本支店の地下に、我々の行きつけのラーメン屋があった。「石狩ラーメン」という名前だった(「石狩」は平仮名だったかも知れない)。
 石狩ラーメンと言っても、札幌ラーメンというわけではなく、麺は細く縮れており、それでいて適度なコシがあった。もちろん、鮭も入ってはおらず、チャー シュー、もやし、海苔などがトッピングされたごく普通のラーメンだった。
 おばちゃんが一人で切り盛りしていて、カウンターに数席と、テーブル席が2つ程度の小さな店だった。
 カウンターの中には大きな寸胴があり、鳥が一羽、玉葱、人参などの野菜類が丸ごと入っており、透明なスープがグツグツと煮立っていた。
 醤油ラーメンにしても、味噌ラーメンにしても、その味を言葉で表現するのは難しいのだが、これぞラーメンのリファレンス!!といったおいしさだった。
 その石狩ラーメンは、我々が高三の時、理由も分からぬまま突如として消滅した。ある日、何の気無しに店に行ったら、取り壊している真っ最中だった。ショックだった。
 それから現在にかけて、札幌狸小路、仙台国分町、福島喜多方、東京荻窪・東池袋・三軒茶屋、横浜都筑区・新横浜ラーメン博物館、博多中州・長浜、熊本、 鹿児島等々、各地の様々なラーメン屋を廻ったが、あれ以上の味には未だに出会っていない。
 理由として、高校時代まだ舌が肥えていなかったから・・・、他においしいものが無かったから・・・、ということは十分考えられるが、同様の気持ちを抱い ている方々もきっとおられるのではなかろうか・・・(私だけかな?)