欠課の風景

 さすがの司馬遼太郎も、空海の時代までは遡るのが難しかったらしく、正確な描写は断念したらしい。
 そこで「風景」という言葉を用い、わずかな情報から、何とか空海の人間像を浮かび上がらせようと試みている。

 それに引き替え、高々二十数年前の情報について、曖昧模糊としている我々も情けないのだが、同期のN.H君より「欠課」について掲載してくれと言われ て、数人に問い合わせてみたものの、どうも「欠課」の詳細がよく分からない。

 確かに普通の高校と違い、欠席日数ではなく科目毎の欠席時間で単位の管理を行っていたというのは、大学チックであるのかもしれないが、でも、結局のとこ ろ、それがどのような管理運用規定に則っていたのかは誰も覚えていない。
 実際、欠課が所定の時間を超え、単位を落とした奴は周りにはいなかった。(ような気がする)
 ただ、欠課というルールにより、以下のような風景を日常的に見ることができた。

 1時限目の休み時間、次の授業の教材か何かを忘れ、部室に立ち寄ったとする。部室にはすでに4人のメンバーがいる。

 「お前ら、二コマ目は休講なの?」
 「まあね」
 「ふ~ん、いいなぁ、俺は次日本史なんだ」
 「日本史って、今のところ何時間欠席してる?」
 「2時間だけど・・・」
 「じゃあ、休んじゃいなよ。ちょうどメンバーも5人揃うことだし」

 こうして今日も、ナポレオンが始まる。