カミチュウ

 社会科(主に政経)を担当していたT.K.先生のニックネーム。
 当時、東大の金時計が多かった深志の教師の中で「俺は東大の落ちこぼれだからな・・・」と無頼派を気取っていた。
 ちょっと皮肉めいた発言も多かったので、生徒の好き嫌いは分かれたが、生徒達を大人として扱ってくれるという点で人気が高かったと思う。
 そんなカミチュウであるが、筆者が3年生になる時に深志から去っていった。深志には10年、20年、中には30年以上という長期にわたってその職に就い ていた教師が多数いたが、それを嫌った教育委員会の策謀により異動させられたのである。

 卒業式の時、カミチュウから来た祝電に講堂が沸いた。
 「卒業おめでとう。(中略) 3年間の深志の生活で得たものを今後も大切にしてください。そして、深志で失ったものを早く取り戻してください」

 深志で失ったもの・・・「落研事件簿」でも紹介しているとおり、深志はとにかく自由だった。したがって、自分を律することの出来ない生徒には大変なところだった。
 また、自分で勉強できない生徒にも容赦はない。初歩的なことは教えない。英語でも文法などは教えてくれない。それどころか、当時、明治大学で使用していた教科書を副読本としていた。
 数学も同様で、文系志望者といえども数Ⅲを最後まで履修させられた。

 筆者は御多分に漏れず、英語に関しては落ちこぼれることになり、自由に慣れた体は、大学に進んでからも改めることは出来なかった。
 怠惰な人間にとって、深志で失ったものを取り戻すのは大変なことである。